アーンドバリューマネジメント (EVM) 基礎知識
大規模プロジェクトでは、コスト超過が常態化しています。 例えば、国際宇宙ステーションの建設は、当初367億5,000万ドルの予算で計画されましたが、最終的な費用は1,050億ドルに達し計画値から186%も上昇しました。 また、予定よりも6年遅れで終了しました。
プロジェクトマネージャーは、コースを外れた悲惨なプロジェクトの舵取りをしたいとは思いません。 このような時には、プロジェクトマネジメントの手法を用いて解決策を探ることになります。 アーンドバリューマネジメント (EVM)は、この問題を解決するための試行錯誤された手法です。
アーンドバリューマネジメント (EVM)とは何か?
アーンドバリューマネジメント(EVM)は、スケジュール、コスト、スコープを統合してプロジェクトのパフォーマンスを測定するプロジェクトマネジメント手法です。 EVMは、計画値と実績値に基づいて将来を予測し、それに応じてプロジェクトマネージャーが調整できるようにします。
一方、EVMS(アーンドバリューマネジメントシステム)は、EVMに使用されるソフトウェア、プロセス、ツール、テンプレートを指します。
この文脈で使われるもう一つの重要な用語は、EVA(アーンドバリュー分析)です。 EVAは、スケジュールとコストの差異を計算することで、プロジェクトのパフォーマンスを評価するための定量的な手法です。
EVMは、EVAをツールの一つとして使用していますが、その範囲はより広くなっています。 EVAが計算の部分で終わるのに対し、EVMはそのデータを使ってトレンド分析や予測をすることが目的です。 EVMはプロジェクト管理機能であり、データそのものと、そのデータに基づいて行われるアクションの両方を扱います。
EVA、EVM、EVMSには魅力的な誕生ストーリーがあります。 1960年代、アメリカ政府のコントラクター管理システムが従うべき35の基準が起草されました。 その後、1990年代に入り、米国規格協会(ANSI)と米国電子工業会(EIA)がEVMSの32のガイドラインを作成し、ANSI/EIA 748規格となりました。 米国国防総省(DoD)や米国航空宇宙局(NASA)など、米国のいくつかの政府機関で使用されている技術システムでは、これが現在のゴールドスタンダードとなっています。
同時に、EIA 748規格は、EVMを実施するために必要なものではありません。 このような基準やルールが、「EVMは難しい」「負担が大きい」というイメージにつながっているのです。 幸いなことに、EVMの測定基準は実際には非常に簡単であり、EVMプロセスは、特定のプロジェクトが必要とする程度の厳密さで実施することができます。
アーンドバリューマネジメントのメリット
フレミングとコッペルマンの詳細な研究によると、プロジェクトの20%に入ると、現在のパフォーマンスを使ってプロジェクトの将来をプラスマイナス10%の偏差で予測することができるといいます。 この強力な予測能力は、EVMによって実現されており、プロジェクトのコスト管理に最適な手段の一つとなっています。
アーンドバリューマネジメントは、以下のような多くの利点を持つパワーツールです。
- マップはコストを扱う仕事で、未知のものを定量的な要素に還元します。
- プロジェクトのベースラインに対して現状を比較・評価し、クリティカルパスを特定します。
- データに基づいたフレームワークを構築し、将来に向けたアクションと意思決定を行います。
- 迅速かつ先回りして介入します(例えば、プロジェクトのスコープや予算の調整、機能のロールバック、より多くのリソースの調達、より優れた技術への投資、顧客の期待値の設定など)。
- 明確な指標により、ステークホルダーに可視性を与え、説明責任を果たします。
- プロジェクトとポートフォリオの両方のレベルで、全体像を把握することができます。
アーンドバリューマネジメント (EVM)の基本概念
EVMには多くの用語があるため、プロジェクトマネージャーの中には不安を感じる人もいるでしょう。 そこで、まずはわかりやすく小さな概念に分けて考えてみましょう。 これらのコンセプトは、それぞれプロジェクトのパフォーマンスを向上させるために重要な役割を果たします。
計画値 (PV)
計画値は完了作業予算コスト (BCWS)です。 PVは、検討している仕事の範囲や、全体のスケジュールの中でのポイントによって異なります。
PV = プロジェクトの総コスト * 計画された作業の割合
例えば、5ヶ月のプロジェクトのPVが25,000ドルだったとします。
プロジェクト全体のPV = $25,000
2ヶ月のPV = $25,000 * 40% = $10,000
例えば2ヶ月目から4ヶ月目までの期間のPV = $25,000 * 60% = $15,000 というように計算することもできます。
実コスト (AC)
実コストは、ACWP(完了作業実コスト)とも呼ばれ、比較的わかりやすいものです。 堅牢なプロジェクトコスト管理ソフトウェアを使用している場合、実際のコストを追跡することは難しいことではありません。 ただし、材料費、資源費、ハードウェア、ソフトウェアライセンス、間接費など、いくつかの隠れたコストを含めることを忘れないようにしましょう。
ACを累積的に見て、プロジェクトの開始から今日まで、または特定の期間に行われたすべての活動を計上することができます。
この例では、2ヶ月後のAC=$15,000とします
アーンドバリュー (EV)
さて、ここからがEVMの面白いところです。 ある程度の量の仕事を終わらせる計画を立て、それに合わせて予算を組みました。 しかし、経験上、見積もりとは多少のズレが生じるのは仕方のないことだということを知っています。 2ヶ月後の時点で、40%を完成させる予定だったが、30%だけ完成させたとします。
ここで問題となるのが実行される作業の予算コストはいくらかということです その答えは、BCWP(実行される作業の予算コスト)とも呼ばれるEVにあります。
この例では
EV = プロジェクトの総コスト * 実作業の割合 = $25,000 * 30% = $7,500
差異分析
計画値、実際のコスト、アーンドバリューの数値は差異計算の基本です。 この時点で、プロジェクトマネージャーは、プロジェクトのベースラインからどれだけ離れているかを知りたがっています。 これは、スケジュールとコストの差異から判断できます。
スケジュール差異(SV)
スケジュール差異とは、当初計画したスケジュールからの乖離を定量的に示す指標です。 マイナスのSVは予定より遅れていることを、プラスのSVは予定より進んでいることを、ゼロは予定通りであることを意味します。
SV = EV – PV
この例では、2ヶ月後のSV = $7,500 – $10,000 = -$2,500
SV% = (SV/PV) *100 = (-$2,500/$10,000) *100 = -25%
これは、スケジュールが25%遅れていることを意味します。 興味深いのは、時間的要素であるスケジュールを、コストの観点から理解することを目指していることです。 しかし、このコストを算出するためには、計画された仕事の範囲と完了した仕事の範囲を知る必要がありました。 このようにして、範囲、時間、コストの3つの柱が一体となったのがEVMです。
コスト差異(CV)
コスト差異とは、当初計画した予算との乖離を定量的に示す指標です。 CVがマイナスであれば予算オーバー、プラスであれば予算以内、ゼロであれば予算通りということになります。
CV = EV – AC
この例では、2ヶ月後のCV = $7,500- $15,000 = -$7500
CV% = (CV/EV) *100 = (-$7,500/$7,500) *100 = -100%
これは、予算を100%超過していることを意味します。
ここでも、範囲、時間、コストが一体となって、プロジェクトの現時点での状況を明確に把握することができます。
パフォーマンス指標
分散とは別に、プロジェクトのパフォーマンスを見るもう一つの方法として、指標があります。 ここでも、スケジュールとコスト指標という2つのパラメータがあります。
スケジュール効率指数 (SPI)
SPIは、スケジュールの観点からプロジェクトのパフォーマンスを把握することができます。
SPI = EV/PV; SPI>1はプロジェクトが予定より進んでいること、SPI<1はプロジェクトが予定より遅れていることを示します。 この例では、SPI = $7,500/$10,000 = 0.75となり、プロジェクトが当初の計画通りに75%しか進んでいないか、スケジュールが25%遅れていることを示しています。
コスト効率指数 (CPI)
CPIは、コストの観点からプロジェクトのパフォーマンスを把握することができます。 CPI = EV/AC; CPI > 1はプロジェクトが予算不足であることを示し、CPI < 1はプロジェクトが予算超過であることを示します。
この例では、CPI=7,500ドル/15,000ドル=0.5となり、プロジェクトの支出が計画の50%にとどまっていることがわかります。
アーンドバリューマネジメント (EVM)の5つの基礎知識
アーンドバリューマネジメント (EVM)とは、明確に定義された計画に対して測定し、ベンチマークを行うことです。 そのため、一定の重要な要素が揃っている組織でなければ実行できません。 EIA-748規格で定義された32のガイドラインは、EVMを実施するための基本的なプロセスとシステムについて詳細に説明しています。 これらのガイドラインは、5つの大きな原則の一部として説明されています。 しかし、繰り返しになりますが、実装するための詳細なレベルと諸経費は、組織の成熟度、プロジェクトの規模と複雑さ、契約上の要件などの要因に応じて異なるはずです。 この原則を確認しましょう。
1. プロジェクトの組織と範囲
要件収集と範囲の定義により、プロジェクトの「何を」の要素を明らかにすることから始めます。 この原則の一環として作成された5つのガイドラインでは、次の3つの重要な文書を作成することが推奨されています。
- 作業分解構成図 (WBS): ハイレベルな成果物を小さなワークパッケージに分割したWBSを作成します。 この図は、成し遂げようとしている仕事を図式化したもので、その範囲を明確にしています。
- 組織分解構成 (OBS): 組織図の一形態であるOBSを作成し、プロジェクトに関わる人、チーム、部門を、その階層、役割、責任とともに示します。 OBSは、「誰が」という要素に対応しています。
- 責任分担表 (RAM): WBSとOBSを組み合わせてRAMを作成し、どのタスクを誰が実行するかを正確に定義します。 これらのマッピングやコントロールアカウントは、今後のステージでそれぞれ測定されます。
2. 計画、スケジュール作成、予算管理
本原則のガイドラインの目的は、プロジェクトのベースラインを具体的に定義することにあります。 これらは、ライフサイクルを通してプロジェクトを監視・制御するためのパラメータです。
WBSは計画段階での良い出発点となります。 複数のアクティビティが1つのワークパッケージにまとめられ、複数のワークパッケージが1つのコントロールアカウントにまとめられていることを確認します。 各アカウントにはアカウントマネージャーがつき、その進捗状況を監視します(実際には、同じ人が複数のアカウントを管理することも可能です)。
この時点で、「いつ」という要素を定義し、高レベルと低レベルの両方のマイルストーンを定義し、各アクティビティに明確な期日を割り当てます。
そして、ワークパッケージ内の各アクティビティのレベルで総予算を配分する、タイムフェーズの予算配分へと進みます。 これには、人件費、材料費、外注費などのコストが含まれます。 また、各ワークパッケージに進捗測定方法を割り当て、進行中のタスクの後の時点でのEV算出方法を決定します。
すべての予算化された作業の合計をパフォーマンス測定のベースラインと呼びます。 また、プロジェクトマネージャーは、予期せぬスコープの増加に備えて管理準備金を計上します。
3. 実際のコストに応じた会計処理
6つのガイドラインでコスト計算のプロセスを説明しています。 この活動の焦点はシンプルです。実際のコストを測定することです。 しかし、ワークパッケージ単位でコストを把握できるシステムがなければ、正確な進捗状況を把握することは難しいでしょう。 また、実際のコストが発生するのは数ヶ月後かもしれませんが、アーンドバリューを計算するためには、その一部をもっと早い段階で配分しなければなりません。 このような予約の遅れを回避するために、ガイドラインでは発生の会計処理を重視しています。
4. プロジェクトパフォーマンスの分析と報告
このセクションでは、PV、EV、AC、および分散と指標の計算について、6つのガイドラインとともに詳細に説明します。 この数字を一貫して報告することで、チームメンバー、シニアリーダー、そしてお客様がプロジェクトの進捗状況を把握できるようにすることです。
しかし、ベースラインに対する測定や数値の報告と同様に、取るべき是正措置を特定することに重点が置かれています。 ガイドラインでは、差異のしきい値を定義することを推奨しています。コストパフォーマンスレポートで、コントロールアカウントのしきい値違反が示された場合、問題のあるタスクをドリルダウンして見つけることができます。
5. 改訂とデータメンテナンス
このセクションの5つのガイドラインは、プロジェクトのベースラインが厳密なものではないこと、特にプロジェクトの途中で問題点が明らかになった場合を想定しています。 しかし、経費を使いすぎたり、タスクが遅れたりするたびにベースラインを修正することはできません。 ガイドラインがベースラインの見直しを推奨する場面としては、プロジェクトのスコープ、コスト、スケジュールに承認された変更があった場合や、レートの変動があった場合などが挙げられます。
変更管理とリスク管理の計画を立て、必要な承認を得て、管理準備金に手をつける必要性を評価することは、このセクションに該当する活動の一部です。
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